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江口渙著『晩年の芥川龍之介』p58

「羅生門」が出たとき私は東京日日新聞に六枚か七枚の短い書評を書いた。そのとき文壇は芥川をあまり認めていなかった。夏目漱石が「鼻」をはじめ第四次新潮に出た作品を、あんなにほめていたにもかかわらず、文壇は芥川に冷やかで、誰も「羅生門」を問題にしようとしなかった。それで、私と佐藤春夫が相談して「羅生門」のための出版記念会をやろうということになった。発起人には私と佐藤春夫のほかに、新思潮から久米正雄と松岡譲になってもらった。そして京橋の鴻の巣で会をもった。そのとき谷崎潤一郎や豊島与志雄も出てくれた。僅か二十五人ぐらい集まっただけだったが、北原白秋の「思い出」の出版記念いらい久しく途絶えていた出版記念会が、これいらい再び復活したのだった。

江口渙著『晩年の芥川龍之介』p58

2014/11/11追記
自分の短篇集が出たタイミングでこのような記事を載せると、自著と羅生門を較べているようだけれど、他意はない。

江口渙著『晩年の芥川龍之介』p58 江口渙著『晩年の芥川龍之介』p58 Reviewed by 黒谷知也 on 11/10/2014 Rating: 5