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菊池寛『半自叙伝』p63,64

 芥川は、白皙で、唇が気持がわるい位、真赤だった。都会育ちの少年らしくよわよわとしていた。入学して間もなく、体操の時間に、入学願書に添わした写真を本人と照し会わせて見ることがあった。そのとき、上級生がやって来て、その写真を見、「これが一番シャンだ」と云って芥川の写真を見ていたのを記憶している。
 久米は、入学当時安積中学の野球のユニフォームを着ていた。恐らく、野球選手の候補として、運動場へ二、三度引っぱり出されたらしい。ユニフォームを着て教室へやって来たことを考えると、その時から久米の面目を発揮している。独逸語の時間に、古い鉄砲の名前が出たとき、種子島と訳して、皆をよろこばせたりした。
 僕は、入学当時は松岡と仲がよかった。僕の態度や風貌の粗野なところは、一高式であったと見え一学期の東寮のコムパのとき、中堅会から表彰され、褒美に、バットを貰った。尤も、バットは後で野球の部室へ届けて置くようとの事であった。

菊池寛『半自叙伝』p63,64

菊池寛『半自叙伝』p63,64 菊池寛『半自叙伝』p63,64 Reviewed by 黒谷知也 on 12/10/2014 Rating: 5