KUROYA TOMOYA WEB

佐多稲子著『夏の栞ー中野重治をおくるー』(新潮文庫)

タイトルの通り中野重治について書いた本なのですが、芥川のことについても触れられているのでメモ。芥川と『驢馬』の同人たちとの関係など記されています。

以下の抜粋の前後にもう少し記述があります。

その私も翌七月には、それも芥川から言い出されて、堀辰雄、窪川とともに、田端の芥川家に出向いている。このとき私が芥川から問われたのは、私のかつての自殺未遂についてのあれこれであった 。白っぽい麻を着た芥川の、コップにサイダーをついでくれる手がこきざみに慄(ふる)えて、そのことに、芥川の神経の疲労を見るようだったのを覚えている、芥川龍之介の自殺はその三日後であった。ついでに云えば、芥川が私に逢おうとしたのは、七年前に上野池之端の料亭の女中として知っていた女のその後を見ようとしてではなく、自殺未遂をした人間の、今日の顔を見ておこうとしたことだったろう、と、これは芥川の死のあとに私の気づく判断であった。

p87 二刷

夏の栞―中野重治をおくる (新潮文庫)
佐多 稲子
新潮社
売り上げランキング: 1,080,495
佐多稲子著『夏の栞ー中野重治をおくるー』(新潮文庫) 佐多稲子著『夏の栞ー中野重治をおくるー』(新潮文庫) Reviewed by 黒谷知也 on 7/19/2015 Rating: 5